SF・ミーツ・ドキュメンタリー!

「ハリー・ポッターと驚異の世界」

SF映画研究家 Dr.G.Hotter(G・ホッター)

今回はファンタジー映画の系譜を探ってみよう。ファンタジーとは異世界や架空の世界、神話の世界等を舞台に魔法等の空想的、幻想的、超自然的な事象を描くSF の1ジャンルである。今やファンタジー映画は大人気で次々と作品が公開され、シリーズ化されている状況である

代表的なシリーズは「ハリー・ポッター」と「ロード・オブ・ザ・リング」(LOR )であり、この二つがファンタジー映画の隆盛に大きく貢献したと言っていいだろう。内容をザックリ説明すると「ハリー・ポッター」は魔法使いの少年ハリーが魔法学校で友人らと共に様々な経験を通して成長していく話(原作 ローリング)、「LOR 」は異世界を舞台に伝説の指輪をめぐる善と悪の壮大な戦いを描いた話(原作トールキン「指輪物語」)と言える。そしてこの二つが大ヒットした事でファンタジーはお子様向けから万人向けの一大人気ジャンルへと変貌を遂げたのである。

ハリポタはシリーズ全7作の映画化(映画は8本)が終了した後も「ハリーポッターと呪いの子」が書籍化(舞台化)されたり、スピンオフ作品の「ファンタスティック・ビースト」がシリーズ映画化されたりしている(全部で5部作になるそうな)。

「LOR 」は映画版三部作が終了した後もやはりスピンオフの「ホビット」がシリーズ映画化された(三部作)。尚、異世界を舞台とする作品をハイファンタジー、現代を舞台とする作品をローファンタジーと呼ぶ。LOR は前者、ハリポタは両方のハイブリッドである。

ファンタジー映画の歴史を紐解くと、白黒時代からそれらしいものはあるにはあったが、本格的なファンタジー映画は1939年の「オズの魔法使い」からという事になる。以降いくつものファンタジー映画が作られたので一部紹介すると、まずストップモーションアニメの第一人者ハリーハウゼンが「シンドバッド」シリーズや「タイタンの戦い」でお伽噺や神話の世界を映画化した。チェコのシュバンクマイエルもストップモーションアニメを駆使して「アリス」「オテネーサク」等を発表している。ミヒャエル・エンデの”果てしない物語”は、どう見ても「犬」にしか見えないドラゴン(ファルコン)が忘れがたい「ネバーエンディングストーリー」という映画となりリマールの主題歌と共に大ヒットした。

マペットで有名なジム・ヘンソンとフランク・オズが作り上げた、人間が一人も登場しない異世界を描く「ダーク・クリスタル」(キャッチコピーは「ヨーダとET の世界へようこそ」)は忘れがたい傑作である。ヘンソンはジェニファー・コネリーの可愛さばっかりが目立つ「ラビリンス」やTV 映画の「ストーリーテラー」シリーズでファンタジーのなんたるかを表現した。実写とアニメを合成した「ルーニーテューンズ」、T ギリアムの出世作「バンデットQ 」、T バートンのダーク趣味全開な「シザーハンズ」「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」、トム・クルーズ主演の珍作「レジェンド」、どうみてもゴリラにしか見えないシュワちゃんが大暴れする「コナン・ザ・グレート」、リアルなドラゴンを登場させた「ドラゴンスレイヤー」「ドラゴンハート」等あるにはあるが、ファンタジー映画は他のジャンルと比べ作品数は極めて少なかった…。

当然である。異世界や魔法、魔女や幻獣等の幻想的なキャラクターを映像化するのは大金がかかるのだ。よって大ヒットしなければ製作費を回収することは不可能。ファンタジーは壮大なセットや特殊効果を用いて異世界を作り込んでも、「大コケすることがよくある」映画会社泣かせの極めてデンジャラスな映画ジャンルだったのだ。

しかし90年代に急速に発達したCGI がどんな映像表現をも可能にし、異世界でも幻獣でもあらゆる架空の事象が映像化出来るようになると少し様子が変わってきた。丁度ハリウッドはネタ切れが常態化し、常にネタに飢えており、人気作の続編、外国作品や旧作のリメイク、リブート(仕切り直して再始動)、プリクエル(前日譚)をわんさか作るしかヒットが出ない苦しい時代であった。そこへ持ってきてハリポタという格好のベストセラー作品が登場した故、「待ってました」とばかりに飛びつき、CGI を駆使し、リアルなファンタジーの世界を創造する事に成功したのだ。その結果、21世紀の始まりと共に大ヒットとなった訳である。

観客にとってもそれまであまり馴染みのないファンタジーは新鮮であった。それまではファンタジーと聞いて連想されるのは、せいぜい「ネバーエンディングストーリー」の犬ファルコンぐらいだった時代に、魔法学校は斬新であった。

LOR もブームを牽引し、ここにファンタジー戦国時代が到来した。「どこかに映画化出来る原作やシナリオはないか?」「おお、まだあれがあったではないか」とばかりに「ナルニア国物語」「ゲド戦記」「ダレンシャン」「テラビシアにかける橋」等の原作もの(原点に戻って「オズ」も映画化)。鬼才バートンやデルトロは元々このジャンルが大好きな方々だから「アリスインワンダーランド」「ミセスペレグリン」「パンズラビリンス」等を嬉々として制作した。神話関連は「パーシージャクソン」を筆頭に「タイタンの戦い」もリメイク➕シリーズ化された。「かいじゅうたちのいるところ」「ジャックと天空の巨人」等昔なじみのお話も次々と登場した。

しかしなんぼCGI が進化しても肝心なのは作り手のイマジネーションであるから、その部分が追い付かずやはり大コケする作品も後を絶たず、上記の中にもコケたものが含まれるし「ライラの冒険」は空前絶後の失敗作となった。そしてファルコンは今見直してもやっぱり「犬」だった。

さてそのブームを作り出した「ハリポタ」がブレイクした際に乗っかり商法的にリリースされたドキュメンタリー「ハリー・ポッターと驚異の世界」を紹介しよう。単なるメイキングではない。(映画のメイキング等は本編のDVD を買えば特典についてくる。)

出演者やスタッフのインタビューが中心だが、これはいかにして「ハリポタ」が映画化されたかというその過程を「ローリングの隣人の姓がポッターだった」等の小ネタを挟みながら描くドキュメンタリー。

子役三人の当時の記者会見の様子、前述したような歴代のファンタジー作品とハリポタとの比較、過去の子役の映画的歴史等も紹介している。

一作目の「ハリー・ポッターと賢者の石」公開直後の映像でキャストも初々しく、ファンタジー時代到来前夜の貴重な雰囲気が味わえる。
ハリポタも、もう20年前かあ…

※2019年発行サポーター通信の原稿を一部修正

「ハリー・ポッターと驚異の世界」
2002年/55分
脚本:ショーン・マクラクラン
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン

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第8回うらやすドキュメンタリー映画祭