SF・ミーツ・ドキュメンタリー!

「ドキュメント・オブ・ザ・デッド最終版」

SF映画研究家 Dr.G.Hotter(G・ホッター)

「カメラを止めるな!」(One Cut Of The Dead )というゾンビ映画(邦画)が大ヒットしている。製作費300万円で無名の俳優陣が出演しているにも関わらず興収は10億円の見込だそうな。テレビ局主導で旬な俳優を揃えた製作費○○億円のクズ映画に皆さん飽き飽きしてたという事なんですね~(←勿論いい映画もありますけど…)

映画は内容が面白ければ無名のスタッフ&キャストでもちゃんとお客さんは入ると。そしてこの映画はゾンビがネタという所がポイントである。ゾンビは他のモンスターと違いコスチュームや仕掛けに金がかからない。顔に青白いメイクをして血糊を塗りたくり、ボロを身に纏って唸ればよい。何と安上がりな…低予算映画にはうってつけだ。ゾンビ恐るべし。

しかしそんな低予算で撮れる映画からビッグバジェットのハリウッド超大作まで、今やゾンビは奥の深~いキャラクターとして進化を遂げ映画界に君臨しているのだ。ゾンビとはブードゥーの儀式を発祥とする「生ける屍」の事だ。SF じゃないじゃないか~!と言われそうだが、どっこい私の定義ではゾンビはSF の範疇である。まず死人が生き返るのは現実ではあり得ない事であり、そういう事象を描くのがSF である。しかもゾンビ映画はその原因を化学薬品や新種のウィルス、害虫駆除用の超音波、宇宙人の仕業等としている故、「なるへそこれは立派なSF 」と皆さんが納得したところで本題に入ろう。

100年以上前に映画が登場し、白黒映画が活況を帯びてきた頃から「私はゾンビと歩いた」等のゾンビ映画はあった。しかし、今巷に溢れるゾンビ映画、そしてゾンビの習性や対処法は全て故ジョージ・A ・ロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」(Night Of The Living Dead )(68年)、更にその続編「ゾンビ」(Dawn Of The Dead )(78年)の影響下にあると言ってよい。特にこの「ゾンビ」が公開されたときは大騒ぎであった。エレベーターに飛び込んで来るゾンビ軍団の映像が怖すぎて、我々小学生は夢でう~んう~んとうなされた。ショッピングモールに逃げ込んだ人間達と、ゾンビとの攻防を緊迫したタッチで描き、追い詰められた極限状態の人間の心理を見事に表現した、映画史に残る傑作である。

何故にこの作品がこんなに心に刺さるのかというと、ここでのゾンビは人類が遭遇しうるあらゆる災害や障壁のメタファーであり、あくまで人間ドラマに主眼を置いて、人間の本質を描ききっているからなのだ。

この映画が話題になるとTV の洋画劇場も「それっ」とばかりに流行に便乗し「悪魔の墓場」みたいな亜流ゾンビ映画を放映して子供らを恐怖のどん底に突き落とした。今あんなの放映したら大問題になるよ。全くのどかな時代だった…。

「ゾンビ」の後に案の定、無数のゾンビ映画が登場し、訳の解らん邦題を配給会社がつけるのもお約束となった。ラブクラフトの原作を下品に映画化した「ゾンバイオ」(はあ?)。イタリア産でひたすらグロいのが売りの「サンゲリア」(さっぱり意味がわからない)、アメリカ産のまたまた残酷描写が売りの「ゾンゲリア」(いい加減にしろ!)、今をときめく「スパイダーマン」を監督したサム・ライミが若き日に撮った「死霊のはらわた」、「ロード・オブ・ザリング」のピーター・ジャクソンが若き日に撮った「ブレインデッド」、ロメロ映画のパロディで、つけられた邦題がオバサンの群衆という意味の造語”オバタリアン”を生み出した「バタリアン」、マイケル・ジャクソンがゾンビと踊りまくるPV が地球的にバカウケした「スリラー」。ロメロはと言えば俗悪コミックを映画化した「クリープショー」や「死霊のえじき」(Day Of The Dead )をもってとりあえず三部作を完結させたりした。

ゾンビ映画は90年代には一度ブームが去ってしまうが、2000年代にゲームを元ネタとした「バイオハザード」の登場でブーム再燃し、以降ウィルス感染モノ「28日後」、「28週後」、POV 方式で撮影された「REC 」、コメディの「ショーン・オブ・ザ・デッド」、ロメロ作品のリメイク「ドーン・オブ・ザ・デッド」、異色アクション「ゾンビランド」、製作費6000円の「コリン」、シュワちゃん主演の「マギー」、ブラピ主演の大作「ワールド・ウォーZ 」、「地球最後の男」の三度目の映画化「アイ・アム・レジェンド」、コミックを映画化した邦画「アイ・アム・ア・ヒーロー」、TV シリーズ「ウォーキング・デッド」等が作られ大ヒットした。本家のロメロも負けじと「ランド・オブ・ザ・デッド」「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」「サバイバル・オブ・ザ・デッド」を発表した。

「○○・オブ・ザ・デッド」というタイトルはゾンビ映画の定番でもあるが、それもやはりロメロ先生の作品が基本となっている。そしてこうして眺めてみてもやはり結局は78年の「ゾンビ」に行きつく訳である。今では完全にカルト化しマニアに愛されているこの作品は「劇場公開版」「ディレクターズ・カット版」「ダリオ・アルジェント監修版」をblu-ray 等で視聴が可能だ。それ以外にも冒頭に惑星の爆発シーンを加えそこからの怪光線がゾンビ発生の原因であるとの解説も入れ込んだ日本公開版、上映時間が三時間以上もあるラフカット版等が存在する。

そしてこの映画のメイキングやロメロ御大、特殊メイク担当のトム・サビーニ、キャストらのインタビュー、未公開フッテージ、「ゾンビ」やその他ロメロ作品の解説等を収録した「ドキュメント・オブ・ザ・デッド」というドキュメンタリーも作られている。このドキュメンタリー映画、現在はソフトが廃盤で価格が高騰しているのでなかなか観ることは出来ない。(だったら紹介すんなよ…)

こういったエピソード一つとってもつくづく「ゾンビ」という作品の凄さとロメロ先生の偉大さが分かるというものだ。ロメロの前にゾンビなし、ロメロの後にゾンビなしである。

※2018年発行サポーター通信の原稿を一部修正

「ドキュメント・オブ・ザ・デッド最終版」
2012年/102分
監督:ロイ・フランシス
出演:ジョージ・A ・ロメロ、トム・サビーニ

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第8回うらやすドキュメンタリー映画祭