SF・ミーツ・ドキュメンタリー!

「ホドロフスキーのDUNE」

Dr.G.Hotter(SF映画研究家)

映画「ホドロフスキーのDUNE」は、未完のSF大作である「DUNE」がいかにして企画され、そして頓挫したかを追ったドキュメンタリーである。SF文学界の巨匠フランク・ハーバートの原作(砂の惑星)を「エル・トポ」や「ホーリーマウンテン」等のカルトな怪作で知られるアレハンドロ・ホドロフスキー監督が手がけたらどうなったか?という興味深い内容が、当時のスタッフや詳細な資料によって克明に語られている。

「DUNE/砂の惑星」はホドロフスキーの後、リドリー・スコット(「エイリアン」「ブレードランナー」)が監督に抜擢されるも降板し、その後も何度か頓挫したので、もう映画化は不可能とまで言われたが、最終的にはD・リンチ(「エレファントマン」「ワイルド・アット・ハート」「TVシリーズ・ツイン・ピークス」が有名)という天才(変態)監督によって80年代に制作され公開された。そして原作を上手く映画の尺に纏めきれず、不完全燃焼な内容となり、世界的に大コケとなった。一説によるとリンチは5時間くらいあった尺を泣く泣く2時間ちょいまで縮めたという。その結果は‥‥とんでもない駄作なんだこれがあ(叫)!!しかし日本においてはそんなにコケた訳でもないし、筆者はむしろなかなかの快作に仕上がっていると思う。(てゆーかハッキリ言って実は大好き。)リンチが変態ぶりを遺憾なく発揮してグロ描写が無駄に炸裂し、ズッシリとした映像は重厚感もあり、バキバキのSFながら登場人物がやたら古臭い格好で登場するあたり、今流行りのスチームパンクだ!という素通りできない要素もある。砂虫ことサンドウォームがぐもも~んと登場するシーンもド迫力でよし、主人公らが鼻にチューブつけて(多分)呼吸してたり、白兵戦の時にビヨヨーンと身体の周囲にバリアが出で来るガジェットもよし、また、ここで主演を務めたK・マクラクランとリンチが出会わなければ、後の「ツインピークス」もあんなにブームになったかどうかなあ、などという感慨にふけらずにいられない等、様々な要素を含んだ極めて重要?な怪作(珍作)であった。但し、リンチは後に再編集を施された長尺版(スーパープレミアム等)の監督クレジットを拒否して、アラン・スミシー名義にしたくらいだからあまり作品をよく思ってないのだろう。

さてそのようにリンチ版をこよなく愛す筆者からすると「ホドロフスキーのDUNE」が無ければ数々のSF映画の傑作「エイリアン」も「スターウォーズ」も「フラッシュゴードン」(←これ駄作と言われている部類の作品だが例によって筆者は大好き)、「マトリックス」も「ブレードランナー」も無かった‥‥等という宣伝文句を事前に聞いても「はあ?」という感じであった。「DUNE」はリンチ大先生がちゃんと作ったじゃないか!と。

ところがギッチョンこのドキュメンタリーを観ると「確かにそうかもしれない」ということがよくわかってしまうのである。プロダクションデザイン、絵コンテの数々が資料で残されており、ホドロフスキーや彼が抜擢した当時のスタッフらがその制作状況を語る。そのスタッフというのがオドロキの面子なのだ。エイリアンの原案ダン・オバノン(特殊効果)、フランスの漫画家ジャン・ジローことメビウス(キャラクターデザイン)、エイリアンの衝撃的なデザインで知られるスイスの画家H.R.ギーガー(建造物デザイン)、SF小説の表紙などで知られるイラストレーターのクリス・フォス(宇宙船デザイン)、プログレッシヴ・ロックの伝説的グループ、ピンク・フロイド(音楽。ホントか?)‥‥。これらのスタッフが手がけた、例えばヴィジュアルの数々はなんと存在感ある斬新なデザインであることか。

「DUNE」が頓挫した後、それらスタッフの多くがそのまま映画「エイリアン」の制作になだれ込んだことを考えると、確かにこの企画がなければ少なくとも後世に絶大な影響を与えた「エイリアン」という作品は間違いなく存在しなかったと言える。「DUNE」(ホドロフスキー版)の制作が1975年、「エイリアン」の公開は1979年。2014年の現在もあの異星人のデザインを超えるモノは出ていない。1977年の「スターウォーズ」にもDUNEの絵コンテに描かれたものと似た場面が登場する。制作されなかったにも関わらず後のSF映画に絶大な影響を与えたといっても過言ではない。尚、ホドロフスキー版「DUNE」には画家のダリやオーソン・ウェルズ、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーがキャスティングされていたという。リンチ版の「DUNE」(1984年公開)にはロック・グループ、ポリスのスティングがキャスティングされ、音楽はピンクフロイドならぬTOTO(アメリカのロックグループ)が担当した。やはり何らかの影響はあったと思わざるをえない。制作されなくてもこれだから、制作されてたらさぞかし凄いモノが観られただろうしその後のSF映画の展開も違ったものになったかも知れない。

誰か金出して今から作ってくれないかな。ホドロフスキー氏もまだ現役で映画作り続けてる事だし。

※2014年発行サポーター通信の原稿を一部修正

「ホドロフスキーのDUNE」
2013年/米/90分
監督:フランク・パヴィッチ
公式HP:https://www.uplink.co.jp/dune/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=r-cnFoqfJfI#t=23

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