SF・ミーツ・ドキュメンタリー!

「デンジャラスデイズ メイキング・オブ・ブレードランナー」

SF映画研究家 Dr.G.Hotter(G・ホッター)

SF映画のランキングというのはありとあらゆる媒体で見かける訳だが、必ず1位か2位になる映画は決まっている。一つは「2001年宇宙の旅」(1968年 スタンリー・キューブリック監督)でもう一つは「ブレードランナー」(1982年 リドリー・スコット監督)である。(「スターウォーズ」は大体その次くらい。)
「2001年」は宇宙を舞台にしたリアルなSF映画で、それまでお子様向けと思われていたSF映画の地位を一気に高めた。

次に「スターウォーズ」がSFの面白さを世界中に知らしめた。

そして「ブレードランナー」は2019年の未来を描いたハードボイルドSFで、あらゆるカルチャーや、工業デザイン、建築デザイン等に絶大な影響を与えた。もはやSF映画に至っては「ブレードランナー」以前か以後か?ということで分類されるのではないか。

ブレードランナー(以下BR)とは逃亡してきた人造人間を捕らえて処分(解任)するのが専門の特捜のこと。この映画は1982年の公開当初は興行的にコケてしまい、失敗作と見られていた。しかしその後レンタルビデオの普及を背景に、あっという間に広まり瞬く間に多くのマニアを生み出した。現在もマニアは増え続け、中毒のようにリピートして鑑賞し、映画の中のあらゆる場面に意味づけし、哲学的要素や謎解きの要素を見つけ出し「あーでもないこーでもない」とBR談義に興じている。

映画自体も公開後にヴァージョン違いが(2014年現在までに)4つも発表され、そのマニアックな展開がますますコアユーザーを喜ばせている。現在は劇場版、完全版、最終版、ワークプリント版、ファイナルカット版が映像ソフト等で視聴可能である。

世界中のあらゆるクリエイター、映画業界や建築業界や何やらのあらゆる業界人はBRの世界観に影響を受け、その結果、2014年現在、世界中の文化やアート、建築物や工業製品はBRっぽくなっている。つまり2019年の未来を映画で提示したら、本当に世界がそういう方向に誘導されてしまったのである。まさにSF映画の新しい形。それまでを未来を描いたSF映画と言えばピッカピカの建物に囲まれた町をピッカピカのこっぱずかしいコスチューム着たアホが、透明なチューブの中をピッカピカ(三度目ですが。)のエアカーでシュー!!と走るというイメージだった。一方BRの舞台は環境汚染で薄汚れた空気がもうもうとして、いつも酸性雨が降り注ぐ落書きだらけの街。あらゆる人種が入り乱れ、あらゆる文化が入り乱れる退廃的で混沌としたLAである。しかし何だかわからないけどリアリティがあって凄い、とみんな思った。そして主人公はありえないほどぶっきらぼうな無口な男で、敵の方がよほど魅力があるという設定もなんだかわからないけどリアリティがあって凄い、とみんな思った。しかし面白いのかつまらないのかよくわからないし、アクション映画かと思って観に来たのに違うじゃないか金返せよとも思った。如何せん1982年には早すぎる傑作であった。後になってみれば「なるほど」と納得のスタッフ、キャストの成せる業だった。原作は今ではSFの巨匠となったP・Kディックの「アンドロイドは電気羊の夢をみるか」、監督は「エイリアン」で映画に進出する前にCMを3000本くらい撮ってた天才ビジュアリスト、リドリー・スコット、VFXは「2001年」のダグラス・トランブル、デザインは工業デザイナーのシド・ミード、キャストは当時インディアナ・ジョーンズで乗りに乗っていたハリソン・フォード、そしてオランダ人で個性派のルトガー・ハウアーなど。今やSF映画の金字塔となった作品はこうして作られた。

さて前置きが長くなったが、ここまでの傑作だとメイキング・ドキュメンタリーすらも傑作になってしまう。「デンジャラスデイズ」とはBRの仮タイトルとしてつけられていたものだがそれをメイキングのタイトルにするとはどこまでもマニア泣かせである。

DVD、BLU-RAYが普及した現在、映画ソフトに特典映像のメイキングが入っているのは当たり前な感じだがBRのメイキングはこれだけでも見応えありだ。この傑作がいかにして制作されたか、その背景がスタッフ、キャストを始めとした関係者によって詳細に語られている。制作の経緯からキャスティング、撮影時の秘話からVFX、未公開シーンetc…。メイキングが作品になってしまうとはBRというのは何とオトロシイ映画なのか。併せて書籍「メイキング・オブ・ブレードランナー」(ポール・M・サモン著)もご一読頂きたい。
(2019/11/30)

※2014年発行サポーター通信の原稿を一部修正

「デンジャラス・デイズ/メイキング・オブ・ブレードランナー」
ドキュメンタリー映画(TV)/2007年(米)/106分(TV放映時)
監督:チャールズ・デ・ラウジリカ
出演:リドリー・スコット、ハリソン・フォード、ショーン・ヤング他
予告編https://www.youtube.com/watch?v=ffgO2F7H1YM

Facebookページ
Twitterをフォロー
第8回うらやすドキュメンタリー映画祭